『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』 金子哲雄 ☆☆☆☆


この正月休みはカリフォルニアの自宅でのんびりさせてもらいました。

以前Book Offで大人買いして来た本、楽しんでいます。

『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』 金子哲雄 ☆☆☆☆




41歳という若さで死んでいく著者が懸命に生きた証と、すてきな夫婦の愛の物語だと思いました。


私は日本のテレビを全く見ていないので知りませんでしたが、お茶の間に登場していた金子哲雄さんってとても頭が良い方ですね。

ワイドショーなどのテレビで見ていたとすると、一見からして私の好みではなく、「軽そうな奴」だと感じてしまったかもしれません。が、人は見かけによらないし、自分の眼力もまだまだだし、いくらでも判断を間違えかねないことを知っておく必要はあるでしょう。

自分の好きなこと、得意分野を十分に理解してかなり戦略的に「流通ジャーナリスト」としてもstatusを作り上げたのが分かります。
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例えば高校時代に数学の得意な友人を見て、「とても勝てない」と彼は数学を捨てます。慶応高校から大学に上がる際に、商魂たくましいと思われたらいやだと経済学部ではなく、文学部東洋史学科を選びます。

サラリーマンの基準からしたら「ヘンな奴」のはずだ。だから就職試験の面接官からは、絶対に聞かれるだろう。

「あなた、ここで何やってきたの?」

こう効かれたときに、面接官を説得できるか。それを自分に課そうと思ったのだ。

私には自信があった。私の中には「他人に話したいこと」がいっぱいあった。面接官ひとり説得できないで、この後評論家として食っていけるわけがない

もちろん評論家狙いの彼は一生サラリーマンでいたいわけではないのですが、一度は「会社」を肌で感じたかったといいます。

何事も実地で体験したかったのだ。サラリーマンとして現場に出ておきたかった。

彼のその他の仕事などでのエピソードは唸ることが多く、ビジネスに携わるものとしてとても参考になります。

肺カルチノイド ― それにしても41歳の若さで他界することになるとは、本人も、そしてこれもまた聡明な奥さまも本当に無念だったでしょう。

大学病院の医師は、治癒率を気にかける。それが業績や評判に直結するからだ。私の病気は治らない。死にゆく病だ。この意思の側からすれば、私のような患者は、厄介者なのだろうと即座に感じた。

多少この業界を垣間見てきていますが、現代の医療の矛盾を感じました。


それでも、告知のショックから何とか立ち直り、夫婦でできる治療は全部試みながら、癌を隠して最後の最後まで仕事をしていく姿はすばらしい。しかも、偉ぶったところがほとんどありません。単純に好きな「仕事」をやり続けたのでしょう。

自分は、病気になる前は60代、70代、80代でこうありたいという姿を、かなり具体的に描いていて、その目標に向かって努力してきた。へんな話、テレビに出ることもある程度想定していたので、それほど舞い上がってはいなかったと思う。ただし、病気だけは想定外だった。
病気になったあとは、遠い将来の目標に向かうわけにはいかない。

遠い未来が見えない状態で生きていくことは、自分にとってはきつい。でも、明日、今日、今と、ごく近い未来を目標に生きるのにも、少しなれた気がする

幾度となく襲われる死への恐怖や絶望感、喪失感に苛まされながらも、いろいろな形で熱中できること、モチベーションを保ちながら生き切ったように思います。

私がこうした立場になった時に、どれだけ頑張ることができるか考えてしまいます。

The important thing is to identify the "future that has already happened"
Peter Drucker






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