【Nolanの言葉の贈り物】二十歳の頃の自分と向き合う ― 『池上彰の世界はどこへ向かうのか』を読んで

思えば、先週、今週とかなりの駆け足だった。先週の日曜日に地元のローカルなアイアンマン・ハーフを何とか完走して、その翌日から日本出張。そして土曜日にとんぼ返りでカリフォルニアの自宅に戻り、今日は赴任地の米国東海岸に旅立つ飛行機の中だ。

アイアンマン・ハーフは以前この場で決意表明をしたものだが、燃えていた頃とは違って実際は全くモチベーションが上がらない。ここまで練習不足だと完走どころか参加するのも無謀に近い状態だった。 練習をサボる言い訳が自分の中で山ほどでき、日本出張を理由に本番さえも諦めようと直前まで迷っていた。それでも一種目でも二種目でもこなすことで多少なりとも次につながると思って参加した。


カリフォルニアに戻った翌日は何と12時間も眠り続けてしまった。


前の週の寝不足に加えて、久しぶりの自宅という安心感もあったのだろう。昨日はジョギングでもと考えたが、何となく脚が重いので止めておいた。よく考えると、レースからまだ1週間ほどしか経っていないのだ。疲れているのは無理もない。

アメリカと日本を往復する飛行機の中では少しでも寝ようと努力しながらも、映画と読書を楽しんだ。

日米合作として話題となった遠藤周作の『Silence』はあまりに重く、2/3ほどで休止中。大学時代の後輩が出演しているのだが、そのシーンまでたどり着けていない。アカデミー主演男優賞を獲った『Manchester by the Sea』はいい映画だった。自分の中でもかなりのお気に入りとなった。

一方、『君の名は』は頑張ったけどダメだった。男となった主人公が友人たちとカフェに行くシーンでギブアップしてしまった。

日本ではいつも通り、本を仕込んできた。帰りのフライトでは3冊ほど駆け足で読んだが『池上彰の世界はどこへ向かうのか』は面白かった。日本経済新聞に連載中の東工大での講義をまとめたものだが、去年の大統領選挙は自分もリアルタイムにTVやマスコミで見てきたが、アメリカで、世界で今何が起こっているかを理解するためにも良い復習となった。

さて、ここでこの本の中から「社会へ旅立つ君へ」と題した最終章のエッセイを紹介しよう。池上彰の社会へと旅立っていく学生に対するメッセージとなっているが、中年も後半戦となった僕自身にとっても感じ入る文章だった。

彼が昔読んだ小松左京の『哲学の小径(こみち)』という小編が題材だ。西田幾多郎など京都学派の哲学者たちに加えて確か湯川秀樹らも散策に耽ったというこの哲学の小径"は、僕も京都を訪問した際に訪ねたことがあり、何となく馴染みを感じる。

物語の中では、中年となった主人公が友人と一緒に哲学の小径で生意気な3人組の学生と遭遇し、挙句の果てには取っ組み合いの喧嘩になるという。しかし、もしやと学生時代の日記を読み返した彼は驚いた。哲学の小径で「俗物の中年男と殴り合った」という記述を自分の古い日記に見出すのだ。

池上は問いかける 将来、君は二十歳の頃の自分と向き合えるだろうか。

そして彼に続いて私も自問する ― 僕は今、二十歳の頃の自分と向き合えるのだろうか。

英才からは程遠いながらも、当時はバンカラな校風も手伝って、自分自身もそれなりに理想と正義感に燃えていたとも思う。しかし、企業に勤めて社会の荒波に飲まれながらいくつもいくつも妥協を重ねてきたし、仕事中はそれなりにキリッとしていたとは思うが、疲れ果てて帰った自宅では単なる酔っ払いと変わらない。哀しいかな、その中年男にさらに輪をかけた、忌避すべく俗物に僕自身が成り果ててしまっている。

それでも、ここ一番だけはけっして安易な道は選んでこなかったとも思うし、多少スリリングな人生を歩んできたわずかな自負もある。青二才だった二十歳の頃の自分に対してもたくさんのアドヴァイスが出来るような気がする。いや、それどころかお節介かも知れないが、むしろ進んでアドヴァイスしてあげたいとも思う。自分の子供たちにも、そしてこれからを担う若い学生たちに対しても。

人様に迷惑をかけなければいい。逞しく、自分の好きなことを思いっきりやりなさい。

子ども達に僕の思いは伝わるだろうか。それはわからない。「最後の章だけでも読みな」そう言い残して、そっとこの本をカリフォルニアに置いてきた。



The important thing is to identify the "future that has already happened"
Peter Drucker






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