優勝に対するチームの思いは、「生まれ」の違いを越えて
過去の全米ジュニア剣道大会の観戦記ですが、多少手を加えてブログの方にも掲載しますね。
『(元)アスリート親父の親ばか観戦記』とも言われています(笑)。
日本の武道ですが、こちらでは日本人、アメリカ人と韓国人のとバラエティ豊かな団体チーム。
メンバーどうしの「生まれ」の違いを越えて、日本での大会とは一味違った、さまざまなドラマが繰り広げられます♪
文章だけでは一見分かりませんが、最後のセリフはとっさに 「"ズィ" ベスト タイショウ」と強調してしまいました。
この団体戦、チームは各道場ではなく、さらに選抜された連盟からの代表チームとなっている。先鋒から大将まで年齢クラスごとに選手が決まる。
12・13歳の部の先鋒戦を我が家のチビが無難に取ったが、奮戦及ばず次鋒は負け。試合の流れを左右する14-15歳の部の中堅戦では、個人戦で3位をとった我が家の上の子に当然期待がかかる。
伏線はあった。団体戦の前に行われた個人戦での出来事だ。
この大会に掛けていた彼は、この半年間は自分の道場の練習の他に、Team USA(アメリカ代表チーム)が主催する週一回のオープン稽古にも欠かさず出て、めきめきと力をつけてきた。準決勝の相手とはその出稽古で普段は互角にやっているという。、
だが、その準決勝で負けてしまう。試合後は声をかけるまでの長い間、面をはずすことができなくなっていた。 かすかにではあるが、肩を震わせている。
この時、相手側のコーチはチームUSAのキャプテン。世界大会などでは日本からの代表選手にも何度となく勝っている、アメリカの中でも猛者中の猛者だ。
試合前、皮肉とはいえ、相手は上の子の弱点と攻め方について的確なアドバイスを受け、息子は丸裸にされていた。試合中、首ばかりかしげている我が息子。普段の攻めが全く通用しないまま、周りも信じられないくらいにあっさりと負けてしまったのだ。
しかし、団体の緒戦、決して強いとは言えない相手に気合だけが空回りしてなかなか一本が決められない。そしてもがいているうちに逆に一本取られて、まさかそのまま負けてしまう。
後続が勝ってチームは最終的には勝ち上がったが、何となくチームの輪に入り込めず、試合の最中も後も塞ぎ込むようになっている。チームのメンバーも親御さんも励ましてくれるのだが。
親の言うことなどあまり聞かない年代であることに加えて、このような状況下である。親の私が何か言おうとしても、彼はいろいろと反発するだろう。
だが、何が何でも私から伝えねばと次の3点に絞って、彼へのメッセージとした。
コーチがいたので遠慮もあったが、親だから感じる彼のメンタル的な焦り、すっかり自信を失ってしまっている彼を少しでも楽にしてあげたいという気持ちが私を後押ししたのだ。
一つ目は「団体戦なのだから、自分が負けたからといって引きこもらない。チームに対してできることはいくらでもある」 ― 基本的には私も体育会系なので、これは息子を叱り飛ばした形だ。
二つ目は「個人戦を見ていても、決してスピードでは負けていない。自信を持っていけ」 ― 自信を失ってどうしていいか分からなくなっている彼の不安を少しでも取り除いてあげたかった。
そして最後に、「ただし、攻めが単調になりすぎて相手に読まれている。もう少し攻めのバリエーションを増やせ」 ― 私自身は剣道をたしなまないので、これ以上技術的なことは言えないのだが、この点については素人目にも明らかだった。
しかし、次の試合を1本勝ちして調子に乗ると、準決勝では互角以上の相手に持ち前の勝負強さを発揮、チームとしての勝敗はタイながらもトータルの本数で団体戦を優位にする2本勝ちをおさめてきた。大殊勲だ。
副将が引き分け、最低限の役割をきっちりと果たしてくれる。よし、大将戦まで持ち込んだ。
最悪、引き分けでも行ける!
我々のチームの大将は強く、大将戦まで持ち込めれば必ずチームは勝ってきた。
だが、勝負の世界は非情だった。誰もが優勝を狙って、それを信じていた。が、あと一歩のところで大将戦を落とし、チームは準決勝で力尽きた。
先鋒で引き分けてしまった我が家のチビと大将らが泣いている。
年代別の個人戦、一つ年上の相手に決勝戦で4連覇をわずか及ばず逃した我が家のチビ。自分でも周りからも勝つことが当たり前になりすぎていた一方で、大会前日は会場までの5時間の道中、食事どころか緊張と不安で嘔吐を繰り返していた。私からはメンタルでも強くなれと逆に喝を入れられてはいたが、考えてみればまだ弱冠12歳だ。
また、大将戦は引き分けでもトータルの本数で勝ち上がれたのだが、試合を有利に進めながらも勝敗を決めたのはミスだった。竹刀を落としたほか、勢いがつきすぎて場外へ出てしまい、反則2つで相手に一本を与えてしまった。
いろいろな面でビックリする結末となってしまったが、彼本人だけでなく、チーム全体として痛恨のミスがあったのだと思う。
チームはこれまで大将戦で勝ちを拾って来たが、毎度々々、彼には必要以上にプレッシャーがかかっていたのだろう。
実は上の子が団体の緒戦で負けて自分を見失っていた際に、何度も励ましてくれたのが、この韓国人の大将とお父さんだった。
各道場から選抜された連盟代表の混成チームのキャプテン(大将)として、日本では中学生になったばかりの我が家のチビのような先鋒や次峰の子にも目を配ってくれた。
メンバーが勝っては一緒に喜び、負ければ励まし、そして何よりも、彼がここ一番の大将戦に勝ってチームをここまで引っ張ってきた。
負けたとはいえ3位。センターコートまであと一歩だったが、仕方がない。
今度は私が彼ら親子に声をかける番だ。
子供たちとっては2年に1度の全米ジュニア、今年の最大の目標だった。ちょっぴりほろ苦くも、結果的には我が家の二人とも、そしてチームも十分な成績を残すことができたと思う。たくさんのことを学びつつ。
かくいう私がいろいろ学んだ一人だ。
選手たちはもちろん、先生、コーチを始め、いろいろな方への感謝の気持ちが尽きない。
さて、ところで我が家の坊主どもには、「お前ら、これからいい加減しばらくは勉強だからな」(笑)。
『(元)アスリート親父の親ばか観戦記』とも言われています(笑)。
日本の武道ですが、こちらでは日本人、アメリカ人と韓国人のとバラエティ豊かな団体チーム。
メンバーどうしの「生まれ」の違いを越えて、日本での大会とは一味違った、さまざまなドラマが繰り広げられます♪
文章だけでは一見分かりませんが、最後のセリフはとっさに 「"ズィ" ベスト タイショウ」と強調してしまいました。
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上の子の異変
気がついたのは、団体での緒戦だった。この団体戦、チームは各道場ではなく、さらに選抜された連盟からの代表チームとなっている。先鋒から大将まで年齢クラスごとに選手が決まる。
12・13歳の部の先鋒戦を我が家のチビが無難に取ったが、奮戦及ばず次鋒は負け。試合の流れを左右する14-15歳の部の中堅戦では、個人戦で3位をとった我が家の上の子に当然期待がかかる。
伏線はあった。団体戦の前に行われた個人戦での出来事だ。
この大会に掛けていた彼は、この半年間は自分の道場の練習の他に、Team USA(アメリカ代表チーム)が主催する週一回のオープン稽古にも欠かさず出て、めきめきと力をつけてきた。準決勝の相手とはその出稽古で普段は互角にやっているという。、
だが、その準決勝で負けてしまう。試合後は声をかけるまでの長い間、面をはずすことができなくなっていた。 かすかにではあるが、肩を震わせている。
この時、相手側のコーチはチームUSAのキャプテン。世界大会などでは日本からの代表選手にも何度となく勝っている、アメリカの中でも猛者中の猛者だ。
試合前、皮肉とはいえ、相手は上の子の弱点と攻め方について的確なアドバイスを受け、息子は丸裸にされていた。試合中、首ばかりかしげている我が息子。普段の攻めが全く通用しないまま、周りも信じられないくらいにあっさりと負けてしまったのだ。
そして団体戦
個人戦のあと、「団体戦で取り返せ」と気持ちを入れ替えさせていたつもりだった。しかし、団体の緒戦、決して強いとは言えない相手に気合だけが空回りしてなかなか一本が決められない。そしてもがいているうちに逆に一本取られて、まさかそのまま負けてしまう。
後続が勝ってチームは最終的には勝ち上がったが、何となくチームの輪に入り込めず、試合の最中も後も塞ぎ込むようになっている。チームのメンバーも親御さんも励ましてくれるのだが。
親の言うことなどあまり聞かない年代であることに加えて、このような状況下である。親の私が何か言おうとしても、彼はいろいろと反発するだろう。
だが、何が何でも私から伝えねばと次の3点に絞って、彼へのメッセージとした。
コーチがいたので遠慮もあったが、親だから感じる彼のメンタル的な焦り、すっかり自信を失ってしまっている彼を少しでも楽にしてあげたいという気持ちが私を後押ししたのだ。
息子へのメッセージ
勝敗も大事だが、それよりも前に、自分のやるべきこと、やれることを精一杯やらせたい。一つ目は「団体戦なのだから、自分が負けたからといって引きこもらない。チームに対してできることはいくらでもある」 ― 基本的には私も体育会系なので、これは息子を叱り飛ばした形だ。
二つ目は「個人戦を見ていても、決してスピードでは負けていない。自信を持っていけ」 ― 自信を失ってどうしていいか分からなくなっている彼の不安を少しでも取り除いてあげたかった。
そして最後に、「ただし、攻めが単調になりすぎて相手に読まれている。もう少し攻めのバリエーションを増やせ」 ― 私自身は剣道をたしなまないので、これ以上技術的なことは言えないのだが、この点については素人目にも明らかだった。
勝負の世界
これらのアドバイスがどこまで役に立ったかは分からない。しかし、次の試合を1本勝ちして調子に乗ると、準決勝では互角以上の相手に持ち前の勝負強さを発揮、チームとしての勝敗はタイながらもトータルの本数で団体戦を優位にする2本勝ちをおさめてきた。大殊勲だ。
副将が引き分け、最低限の役割をきっちりと果たしてくれる。よし、大将戦まで持ち込んだ。
最悪、引き分けでも行ける!
我々のチームの大将は強く、大将戦まで持ち込めれば必ずチームは勝ってきた。
だが、勝負の世界は非情だった。誰もが優勝を狙って、それを信じていた。が、あと一歩のところで大将戦を落とし、チームは準決勝で力尽きた。
先鋒で引き分けてしまった我が家のチビと大将らが泣いている。
年代別の個人戦、一つ年上の相手に決勝戦で4連覇をわずか及ばず逃した我が家のチビ。自分でも周りからも勝つことが当たり前になりすぎていた一方で、大会前日は会場までの5時間の道中、食事どころか緊張と不安で嘔吐を繰り返していた。私からはメンタルでも強くなれと逆に喝を入れられてはいたが、考えてみればまだ弱冠12歳だ。
また、大将戦は引き分けでもトータルの本数で勝ち上がれたのだが、試合を有利に進めながらも勝敗を決めたのはミスだった。竹刀を落としたほか、勢いがつきすぎて場外へ出てしまい、反則2つで相手に一本を与えてしまった。
いろいろな面でビックリする結末となってしまったが、彼本人だけでなく、チーム全体として痛恨のミスがあったのだと思う。
ありがとう
本人たちにはもちろん、応援している親たちにとっても口を開きづらい、重苦しい負け方だった。チームはこれまで大将戦で勝ちを拾って来たが、毎度々々、彼には必要以上にプレッシャーがかかっていたのだろう。
実は上の子が団体の緒戦で負けて自分を見失っていた際に、何度も励ましてくれたのが、この韓国人の大将とお父さんだった。
各道場から選抜された連盟代表の混成チームのキャプテン(大将)として、日本では中学生になったばかりの我が家のチビのような先鋒や次峰の子にも目を配ってくれた。
メンバーが勝っては一緒に喜び、負ければ励まし、そして何よりも、彼がここ一番の大将戦に勝ってチームをここまで引っ張ってきた。
負けたとはいえ3位。センターコートまであと一歩だったが、仕方がない。
今度は私が彼ら親子に声をかける番だ。
Thanks to, and because of you, and your son, we’ve come this far. We’ve got The Best Taisho in this tournament. Thanks, and congrats. Good match.
君のおかげで、あなたの息子さんのおかげでチームはここまで勝てて来れたのだ。我々のチームには今大会最高の大将がいた。
子供たちとっては2年に1度の全米ジュニア、今年の最大の目標だった。ちょっぴりほろ苦くも、結果的には我が家の二人とも、そしてチームも十分な成績を残すことができたと思う。たくさんのことを学びつつ。
かくいう私がいろいろ学んだ一人だ。
選手たちはもちろん、先生、コーチを始め、いろいろな方への感謝の気持ちが尽きない。
さて、ところで我が家の坊主どもには、「お前ら、これからいい加減しばらくは勉強だからな」(笑)。
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